ラビットS302

青いウサギ

秋のある日、親父から電話がかかってきました

ラビットが不調らしい
1964年生まれの老兎…

富士重工(スバル)製のスクーター
ラビットツーリングS302T
123cc 8PS 4速ミッションを装備し
べスパ(ピアッジョ社)や
ランブレッタ(インノチェンティ社)というイタリア勢に対抗出来る
高性能車として輸出もされたそうです。

富士重工の前身は『中島飛行機』。
終戦まで有名な戦闘機『一式戦 隼』などを生み出し
同じく有名な『ゼロ戦』などを生み出した三菱のライバルです。

終戦直後に中島飛行機から富士産業と社名が変わり
その後富士重工となったようです。

ピアッジョもインノチェンティも、飛行機に関連した会社ですね。
三菱も『シルバーピジョン』というスクーターを作っていますし
ドイツではハインケルという飛行機メーカーが
スクーターを生産しています。


戦争という狂気が過ぎ去った後
それぞれ社会の復興を支え、人々の生活の足として
スクーターを作ったようです
平和な…人の役に立つ乗り物を。
ガレージで簡単な整備をしてみましたが
特に大きな不具合は無さそうです。

おいらより年上の『ウサギ』さんです
どこか具合が悪くなっていても不思議じゃないでしょう
致命的な問題が起きていなければ良いのですが…

少し走らせて様子を見る事にしました。

『くるくるくるくる…』という
どこかのどかなセルモーターの音
今のスクーターみたいな金属音はしません。

すこし長いクランキングの後
『くるくるくるくくくく…っとんとととととんとっととんとんとんとっとっ』

紫の煙を吐き出しながら、エンジンが掛かりました^^
なんか…眠たそうな、寝起きって感じだなぁ〜

アイドリングが『ととんとんとんとん』っと
リズミカルに安定してきたところで…

さてと…
ウサギさん、ちょっと散歩に出掛けましょうか?
左グリップを捻ってギヤチェンジなのです。
クラッチを握り、下へ捻って1速へ
『ばろろろろ〜っととんとんとん
  ばろろろろ〜っとんととんとん
   ばろろろろ〜っととんとんとんとん』

加速は…うちのストマジの方が速いです^^;

ストマジは50ccと言えども7.2ps
今は排気量を65ccにまで上げてますから…
計算上9ps程度出ているでしょう


ま、そんな数字の事なんかどうでもいいですね

『びぃ〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!』という
けたたましい音を吐き出すストマジと違い
のどかな音のラビットは
田舎の集落の中でも気兼ねなく通れる気がします。

ゆっくりと、労わりながらもこんな山道を登ってきました。
遠く有明海が見渡せる場所


左側のグリップを捻って4速のギヤを操るので
クラッチレバーが上向いたり下向いたり…^^

ウインカーのスイッチは左右じゃなくて上下に動きます
上が左で下が右…だったかな?
「え〜っと…」なんて考えながらの操作になっちゃうなぁ^^;

高い空とススキの穂が晩秋の頃を物語りますね
今日は暖かくて良い天気です。



ハンドルの下の方
四角い穴が2つ開いてる部分にバッテリーが入っています。

6Vのバッテリーが直列で2個繋げてあり
電装は12Vなんですよ^^

最近バッテリーが弱ってしまったので
12Vの密閉型バッテリー1個に交換しました
元のバッテリー一個分のスペースは
便利な小物入れとなってます^^
1部が欠けてしまい残念なのですが…

ツーリングラビットの誇らしげなエンブレムが付いています。


最近のメッキしたプラスチックを両面で貼ってるのと違い
リベット留めされた金属性のエンブレムは
良い雰囲気ですね^^
右の足元にあるリヤブレーキペダル

ウサギのマークが付いています


露光オーバーな写真ですけど…^^;

途中の道端にミツバチの巣箱が置いてありました。
無数に舞飛ぶミツバチの羽がキラキラと光ってたのでパチリ!

白い点々がいっぱい写ってるでしょ?
よく見えるようにしたら露光オーバーになっちゃいました…
この時期のミツバチ達は
何の花から蜜を集めてるのかなぁ?

そっと巣箱に近づいて中を覗いて見ましたが
・・・うわ〜いっぱい居るなぁ^^;

当たり前ですね・・・

ミツバチってアシナガバチやスズメバチと違って
滅多に刺さないと思います

・・・勝手にそう思ってるだけなんですが^^;

すぐそばで箱の中覗き込んでも
刺されませんでしたよー

スズメバチは怖いですね
アシナガバチも好戦的で恐ろしいです

彼らの巣に近づこうとは思いません・・・
山の中に御堂があったので
その前にて写真撮影〜

『日本』を強調して見た訳ですね^^
海外のラビットオーナーズクラブが喜びそうな(?)写真を
目指してみました


・・・喜ぶのか?
ツーリングの名前が示す通り
このウサギさんはツアラーなのですよ

大きなタンデムシート
長いリヤキャリア
そして、フロントにもキャリアが付いているんです

2人分の荷物を積んで
ロングツーリング出来るんですよ^^

何か『旅に出掛ける』って感じしませんか?
今のビクスクには感じられない雰囲気がします。

どこにでもコンビニがあって
24時間営業のガソリンスタンドがあって
夜でもいっぱい明かりがあって…

そんなもの、何一つない時代
山道は未舗装が多かった時代

今なら日帰りで流す所へ行くのも
『旅』だったと思います。


そんな事を考えていたら…
いろんな記憶がたくさん甦ってきました。

そうだ…
それはおいらが物心付いた頃の事なんだ!


幼い頃、家族で出掛けた南九州
クルマは日野コンテッサ(!)

今なら高速で日帰り出来る宮崎へ
明け方に出発しR3を南下
八代から球磨川沿いにR219号を延々と人吉へ
そして難所R221号線『加久藤越え』堀切峠
当時、まだ有名なループ橋は有りませんでした。

狭い未舗装の険しい峠道を越え
ようやく辿り着いた『えびの高原』『霧島』

同じ頃,同じルートを
2人分の荷物を積んだタンデムのラビットが旅してたのでしょうか…
おいらの親父やお袋が
今のおいらより若かった頃

このラビットとは別の
200ccのS601「ラビットスーパーフロー」に乗り
タンデムツーリングをしていたみたいです。

時代は昭和30年代
まだ自動車が高価だった時代
結婚してからも生活の足として活躍し
真冬の夜、生まれたばかりの兄が熱を出し
兄を背負ったお袋を乗せて病院へ走った事もあったそうです。
幼い頃
配達等で働くラビットを沢山見かけました。

出前、米屋さん、集金…

ビックリするぐらいの大きな荷物を積んで
走ってる力持ちもいたっけなぁ…

家の中から聞いた
ラビットの排気音…
お米屋さんが持ってくる『プラッシー』が楽しみでした^^

「・・・ばろろろ〜ぎゅんぎゅんぎゅん…ごとっ…ととんとんとんとん…」
              ↑         ↑
             エンブレ     スタンドをかける音


喜んで玄関へ行ったら、ただの集金だったりしてガッカリ…(×。×)


画面をクリックすると少しだけ音が聞けますよ^^
あ、そうだ!
おいらのバイク初体験も
このラビットのタンデムシートだったんだ!!^^


この音が妙に懐かしく響くのも
嬉しい気持ちのなるのも…

親父の後ろで聞いてた音を
今自分が操って出してるんだなぁ(^▽^)〜♪
今年の秋は気温が下がらず
紅葉は遅れ気味でした。

それでも山奥の沢沿い
冷え込む場所では赤く色付いた紅葉が見れました^^

このラビットは、おいらより多く季節を見てきたんですね



改めて…
こんにちはウサギさん
30年以上前にリヤシートに乗っかってたチビです。
その節はお世話になりました
お蔭様でバイクに目覚めたんですよ〜

今じゃこんなに大きく重くなりました
乗せて走るの大変じゃないですか?

終戦直後の混乱の中1947年
戦争で荒れ果てた日本に登場したラビット

戦後の復興から高度経済成長と呼ばれる時代になるまで
みんなの暮らしを支えて飛び跳ね、懸命に働いたウサギ達

みんなが豊かになり
クルマを手に入れ始めると、次第に忘れられ
姿を消していったウサギ達


今、いったい何台が生き残っているのかなぁ…?

でも、このウサギに教わった『風を切って走る』感覚は
三十数年の時が過ぎても
記憶の中にハッキリと残っていましたよ^^
帰り道

エンジンのカブリが取れたのか
すっかり快調になったラビット

今の原付スクーターに遅れは取りませんでしたよ


なんだか…
『年寄り扱いするなっ!』って言ってるみたいだなー^^


折れたブレーキレバーを補修し
ボロボロに崩れた燃料コックのパッキンを作り直し

おいらに出来る修理ならいつでもやるから
まだまだ元気に飛び跳ね続けて下さいねー

青いウサギさん^^
好調になったよーって電話したら、親父さっさと乗って行っちゃったよ!^^;

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